はじめに:ベテランでも始めては怖い
看護師20年というキャリア。その数字だけを見ると、
周りからは「なんでもできる完璧な人」という目で
見られてしまいます。でも、どれだけ経験を重ねても、
新しい職場、初めての触れる診療科では、誰だっ
て「新人」に戻ります。
私も、以前新しい職場に入職したことがありました。
そこで待っていたのは、これまで経験した事がなか
った内視鏡介助という高い壁でした。
20年というプライドがあるからこそ、出来ない自
分が情けなくて、夜も眠れないほどプレッシャーを
感じる日々。今日は、そんな私が職場の人間関係と
仕事の重圧に押しつぶされそうになり、そこからど
うやって心を救い出したかをお話しします。
突きつけられた強い言葉という壁
内視鏡室の独特な緊張感。先生の動きに合わせて、
瞬時に処置具を出し入れする「阿吽の呼吸」が求めら
れる現場です。特に、病理検査(生検)のタイミングは
一発勝負。

過去の私
「先生の手を止めてはいけない。
生検鉗子をだすタイミング、
生検の回収…。
もし、失敗したらどうしよう…」
手汗が止まらない私に、指導担当の先輩から飛んで
きたのは、突き放すような言葉でした
・そんなこともわからないの?
・やり方は見て覚えて
・昨日も教えたよね。私の時はできて当たり前と
言われていたわよ。
威圧感のある声が、検査室に響くたび、私の思考は
フリーズしていきました。本来なら、患者さんの安全
に集中するべきなのに、私の意識は「あの人に怒られ
ないこと」に100%占領されてしまったのです。
20年選手を苦しめるできて当たり前という呪い
看護師の正解には、いまだに「厳しく教えるのが愛の
鞭」という風潮が残っています。「自分もそう育てら
れたから」という言葉は、後輩を追い詰める免罪符の
ように使われることもあります。
特にキャリアが長いと、「20年もやってるんだから
1回見ればできるでしょ」という無言の期待が重くの
しかかります。

私の本音
「20年やってきた。でも、
内視鏡は初めてなんです。不安で、
怖くて、逃げ出したい…。」
家に帰っても、頭の中ではその人の鋭い言葉がリフ
レインします。悔しくて、情けなくて、教科書を広
げて必死に手順を暗記する夜。でも、現場に立つ
と、その人がそばにいるだけで体の余分な力が入
り、いつも通りに動けない。
一人の「強く言う人」の存在が、私の心のシェアを
すべて奪い取っていったのです。
視点を変えたら見えてきた背景にいる優しい人たち
そんなある日、心がポキリと折れそうになっていた
私に、別のスタッフがそっと声をかけてくれました。
「私たちも、最初は全然できなかったよ。ゆっくりで
大丈夫、いつも間にかできるようになるからね」
その一言で、止まっていた呼吸が深く吸い込めたよ
うな気がしました。
その時、私はハッと気づいたのです。
これまでは、攻撃的な言葉を投げかけてくる「一人の強い
人」ばかりを見て、怯えていました。でも、よく周り
を見渡してみれば、そこには黙ってフォローしてく
れる人、温かい言葉をかけてくれる人、一緒に頑張
ろうとしてくれる人たちがちゃんといたのです。
・強く言う人:たった一人
・優しく見守ってくれる人:何人もいる
それなのに、私はそのたった1人のネガティブな言葉
に、自分の価値まで決めつけさせていた。あの日、
私を救ってくれたのは、あの人の優しさだった。
そう思えた瞬間、心に差していた影が少しだけ薄くな
るのを感じました。
心の境界線を引く。仕事が終わればその人の言葉も脱ぎ捨てる
それからの私は、仕事が終わって病院の玄関を出る時、
心の中でこう唱えるようにしています。
「今日の仕事は終わり。あの人の言葉も、ここに
置いていこう」
仕事が終わった後は、もうその人のことを考える時
間は1秒もいりません。私の人生の貴重な時間を、私
を大切にしてくれない人のために捧げるのは、もう
やめにしたのです。
玄関をでたら、そこからは私の時間。
家に帰れば、大好きな家族との時間が待っていま
す。
お気に入りのヨガマットを広げて、ゆっくりと深い
呼吸を繰り返す。硬くなった体をストレッチでほぐ
していくと、職場で受けた刺々しい言葉が、汗と一
緒に体から抜けていく感覚があります。
家族の笑い声や、心地よい疲労感。それこそが、私の
「本番」の人生であり、職場の強い言葉は、あくまで
人生のほんの一部に過ぎないのです。
まとめ:あなたの価値は、誰かの言葉では決まらない
もし今、あなたが誰かの強い言葉に傷つき、「自分は
ダメな看護師だ」と落ち込んでいるなら、どうか一度
だけ顔を上げて周りをみてください。
あなたのことを認めてくれる人、助けようとし
てくれる人は、必ずそばにいます。
1人の強い言葉にとらわれて、そばにある10の優し
さを忘れないでください。
20年続けてきたからこそ、今の私なら言えます。
仕事はいつか必ずできるようになります。でも、あ
なたの心は、あなた自身が守ってあげなければなり
ません。
「強く言われて凹むけど、仕事が終わった後は考え
ない」
それは逃げではなく、この過酷な現場で自分らしく
輝き続けるための、最高の知恵です。
視点を少し変えるだけで、世界は驚くほど軽くなり
ます。
「ナースの止まり木」が、今日もどこかで頑張るあな
たの心を、少しでも癒す場所になれば幸いです。



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